毎日の暮らしを、湘南の海とともに。鎌倉の海と光を描く画家・亀山和明さん
“描くのは鎌倉の海”。毎日、七里ガ浜で海を見つめ、自由な感性で描写してきた画家・亀山和明さん。そんな彼の作品を一堂に集めた展示会「亀山和明・個展 海の絵を飾ろう」が、5月3日(金)~5日(日)くらしテラスにて開催されました。その展示会の模様と、亀山さんの作品に対する思い、そして湘南での暮らしなどをおうかがいしました。
デザインの世界から一転、湘南で画家に
この日のくらしテラスは、いつもとは様相が異なり、どこか美術館の一角を思わせるような印象。きらびやかな光に包まれた海、漆黒を感じさせる海、海中とも海面とも思える不思議な雰囲気を漂わせる海……。実にさまざまに異なる海を描いた作品が、所せましと飾られていました。
亀山さんが鎌倉の海を描き始めたのは、約17年前。東京からここ湘南へと居を移してからとのこと。グラフィックデザイナーとしての仕事を辞め、都心での生活からライフスタイルを大きく変えて、七里ガ浜にやってきたといいます。
「広告の仕事はクライアントの要望に応えるのが第一で、時には自分の考えとは違うことも宣伝しないといけない。そこでお金をいただくことに疑問が生まれ、やがてそれが自分の気持ちに嘘のつかない作品を作って生きていきたいという考えになったんです」という亀山さん。海を描く画家になると決めて、それならば海の近くに住んだ方がいいと鎌倉に移り住んだのだそうです。
イベント会場の様子
額縁もすべて亀山さんの手づくり
毎日スケッチが代名詞に
幼少から絵を描くことは好きだったけれど、デザイナー時代はほぼ描いていなかったそうで、そこからプロの画家になることは、やはり簡単ではなかったそうです。40 歳からの遅すぎるスタートで先輩画家達に追いつくには“とにかくたくさん絵を描くこと”。枚数を重ねるしかないと考えた彼は、海に出てスケッチを始めます。
2002 年11 月から七里ガ浜で始めた「海のスケッチ」は彼の制作動のベースとして続けられ、作品点数は4000 枚を超えて今なお続いています。途中2004 年1 月4 日から2007 年1 月3 日までの3年間は、1 日も休まず、雨の日も、雪の日も、台風の日も、海に出て描き続けました。「同じ海を毎日スケッチしていても、天候や時間帯、季節で、光も風も、波も、色や形がどんどん変わります。自分自身の気持ちも変わるから同じ海でも感じ方が違う。同じ光景は一瞬もないですから」と、彼は言います。
17年間の制作のベース。海のスケッチ。
手軽に飾ることができるポストカードも
亀山さんの絵で印象的なのは、光のきらめき方。キラリと瞬くような光、重厚な色調のなかに鈍く光る輝き、じんわりとしたほのかな光彩、その他あらゆる種類の光がキャンバスに描かれています。「人間、誰でも光っているモノって好きですよね。水面のキラキラや星の瞬き、夜景もそうだし、宝石も大好き。みんな光に心を奪われるじゃないですか。本能にインプットされているのかなぁ」と亀山さん。そのように光を大切に描くのは、亀山さんが敬愛する“光の画家”と呼ばれたモネをはじめとする印象派の画家の影響があるのかもしれません。
鎌倉のカフェでは常設展示も
さて、湘南へと移住して約17 年、湘南の暮らしが好きという亀山さんにとって、ここ湘南とはどんな場所なのでしょうか。「都会なんだけど、どこか田舎。時間の流れがゆっくりしていて、いい意味で“テキトー”なゆるさがいいですね。それに仕事をするだけではなく、しっかりと遊ぶ。遊び上手な大人が多いですよね」と亀山さん。また「地元・湘南を好きな人が多いせいか、“湘南が好き”という共通項があるだけで、どこか心がつながるような感じがしています」
そんな亀山さんですが、画家としての活動以外にも、鎌倉のカフェ「Daisy’s Cafe」で店長をしていたこともあったそう。「そこでは若いミュージシャン達のライブなどを行うこともあるのですが、彼らのひたむきに上を目指そうとして頑張る姿には、ジャンルは違えど同じ創り手として刺激を受けましたね」(亀山さん)。
「家に飾られて初めて、絵は完成する」
今も変わらず海を描き続けている亀山さんですが、最近は徐々に作風を変えていると言います。「画家として10 数年経って、ようやく少しづつ名前と作品が知られ、やっとスタート地点に立てたと思うんです。でもそこに安心しちゃダメで、創り手は見てくれている人をいい意味で常に裏切らなきゃいけない。僕が前々からやりたかった方向性を今からならやれるかなと」と亀山さん。
亀山さんが理想とするのは、写真のように写実的に風景を描くのではなく、「これって何だろう?」と想像力をかきたたせ、観る人が自由に受け止めて、想像できる余地がある作品。その絵を見た人の心のどこかを揺り動かし、何かを感じてくれる。そして暮らしの中に飾られていく絵だといいます。「絵は描き終わって完成ではなく、誰かの部屋に飾られて初めて完成なんだと僕は思っています」と亀山さん。
海の中から空を眺めた絵、またはたゆたう波の絵と観るかは自由
エッセイ&画集「海色」
そうした亀山さんの作品は、今回のようなイベントでの展示だけではなく、先ほどご紹介した「Daisy’s Cafe」にも飾られ展示販売をしているほか、作品集「海色」としてまとめられています。ON LINE SHOPからも作品の購入ができます。独自のスタイルを持つ画家として、自らが体験した素直な感動が表現された“心に響く絵”は、私たち湘南人のこころにストレートに訴えかける迫力と穏やかに寄り添う優しさにあふれていました。
亀山 和明(かめやま かずあき)
2002 年に20 年間のグラフィックデザイナーから画家へと転身。海を描く為に鎌倉に移住。日々海と向き合い 、海を描き続けている。17年間に制作した作品は約4,200 点。自身の絵は、高尚な手の届かない「芸術」であるよりも、生活の横にある「壁の絵」でありたいと考えている。空や海や風や波の表情、なにより自然からいただく素直な感動を描くことで、見る人の心に何かしらの「安らぎ」が生まれるような作品造りをめざしている。
オフィシャルサイト:http://www.kameyamakazuaki.com
亀山和明<海の絵のblog>:https://ameblo.jp/tortoiseroom/
亀山和明ON LINE SHOP:http://tortoiseroom.shop-pro.jp/